Ben Watt "Hendra" (2014)

Ben Watt

"Hendra" (2014)




ベン・ワットは最初にきいたのがロバート・ワイアットとのミニアルバム「Summer Into Winter」だったり、エヴリシング・バット・ザ・ガールの「Eden」のドラムがディス・ヒートの(というかクワイエット・サンの)チャールズ・ヘイワードだったりしたので、プログレの人かとおもいこんでいましたよ。ファーストアルバム「North Marine Drive」はいまでも愛聴盤ですが、じつをいうとEBTGの「Love Not Money」までしかフォローしていないので、それ以降の活動はまったく知らないです。そして長いブランクのあとで本作をきいてみましたが、ソロとしてはセカンドということなのでよかったです。

ピンクフロイド(炎)ふうのシンセの導入部にアコギのアルペジオが重なってメランコリックなタイトル曲「Hendra」のはじまりです。そしてエレピとリズムセクションが入ったキャッチーで疾走感のある「Forget」もやはり根っこはメランコリック。「Spring」はピアノ伴奏バラード。「Golden Ratio」はボサノバふう(待ってました)でファーストに近いです。「Matthew Arnold's Field」は「Hendra」と同傾向ですがピアノ伴奏。「The Gun」はエレキギターが入ってオルガンも入ってじわじわとなってティム・バックリーふうでよいです。「Nathaniel」はニューヨークパンクふうのドライヴ感があってかっこいいです。本作ではこれとか「Forget」とかが自分としてはしっくりきました。「The Levels」はカントリーふうバラードですがスティールギターが入ってそこはかとなくピンクフロイドふう、とおもったら弾いているのはディヴィッドギルモア本人ではありませんか。ベン・ワットはやはりプログレの人なのではないでしょうか。「Young Man's Game」もアメリカン路線でオルガンも入ってなごみました。「The Heart Is a Mirror」ではウッドベースとアコギの深みのあるサウンドにチープな音色のシンセがアクセントをつけています。

そういうわけで、全体的な印象はなぜかボアダムス山本精一さんの歌ものに近いように感じました。
ベンワットさんは本作のあとにサードアルバムもだしているようなのでそれもきいてみたいです。



The Winstons "The Winstons" (2016)

The Winstons

"The Winstons" (2016)



ジャケがたいへん印象的なイタリアのアヴァンロック/RIO系のウィンストンズは、メンバーの苗字が全員ウィンストンになっていますが、各曲クレジットには本名らしきものがちゃんと書かれているので、ラモーンズ方式だとおもいます。
ポストモダンなアヴァンロックとはいえ、ジェントル・ジャイアントの影響や、オザンナっぽいダーク&ヘヴィネス、ピッキオ・ダル・ポッツォっぽいカンタベリーテイストを感じさせるのはやはりイタプロ(イタリアン・プログレッシヴ・ロック)ならではです。3曲目などは70年代テイストのカンツォーネ・ロックふうになっています。
2曲目と10曲目は歌詞が日本語ですが(作詞はカワムラさんという人ですが、この人がジャケ絵――「私たちはシャイなヌーディスト」、シャイなので顔を隠しています――も描いているようです)、うっかりしていると日本語だとは気づかないのではないでしょうか(もっともさいきんの日本の歌もうっかりしていると日本語だと気づかないです)。
音楽性については、「Thanks to」のところに「デヴィッド・アレン」「ヒュー・ホッパー」「ロジャー・ウォーターズ」「ロバート・ワイアット」「高円寺(Koenji area)」等とあるので想像できるのではないでしょうか。たいへんよい作品なのできくとよいです。



The Winstons (2016)

1. Nicotine Freak
2. カンガルー目 (Diprotodon)
3. Play With The Rebels
4. ... On a Dark Cloud
5. She's My Face
6. A Reason For Goodbye
7. Dancing In the Park With a Gun
8. Viaggio Nel Suono A Tre Dimensioni
9. Tarmac
10. 番号番号 (Number Number)

Linnon Winston (Lino Gitto): drums, keyboards, vocals
Enro Winston (Enrico Gabrielli): keyboards, woodwinds, vocals
Rob Winston (Roberto Dell'Era): bass, electric 12 string guitar, vocals
guest:
Xabier Iriondo Gemmi: soundmetak
Roberto D'Azzan: trumpet

Produced by The Winstons

Cover paints: "Noi siamo nudisti timidi" by Gun Kawamura

CD: AMS Records



CHEER-ACCIDENT "Putting Off Death" (2017)

CHEER-ACCIDENT

" Putting Off Death" (2017)



シカゴのアヴァンロックバンド、チアー・アクシデントの新作です。'80年代初頭から活動しているのですでに芸歴30年以上のベテランさんであります。これが18作目のアルバムということですが、知らない人には(知らない人がほとんどだと思うので)新人バンドのデビュー作といっても通じるくらい、初々しい実験精神と繊細な悪意とそこはかとないノスタルジアに満ちた作品になっています。ピアノの軽快なリフにやや憂いをおびたのびやかな女声ヴォーカルがのっかる二曲目などはステレオラブかと思いました。
とはいうものの、一筋縄ではいかない懐の深さを感じさせるのはさすがです。
マグリット風のジャケ絵もそこはかとなく謎めいていてよいです。


CHEER-ACCIDENT "Putting Off Death"

1. Language Is
2. Immanence
3. Wishful Breathing
4. Falling World
5. More And Less
6. Lifetime Guarantee
7. Hymn

Jeff Libersher: guitar, trumpet, vocals, keyboards
Dante Kester: bass, keyboards
Thymme Jones: drums, vocals, piano, trumpet, keyboards, acoustic and electric guitars, moog, noise
Carmen Armillas: vocals
Mike Hagedorn: trombone
Teria Gartelos: vocals
Sacha Mullin: vocals
Cory Bengtse:n baritone sax
Beth Yates: flute
Julie Pomerleau: violin
Joan Morrone: french horn
Ross Feller: tenor sax
Rob Pleshar: tuba
Todd Fackler: tuba

CD, LP: Cuneiform Records, Rune 446 (2017)



高田みどり 「鏡の向こう側」 (1983)

高田みどり 

「鏡の向こう側」 

(1983)



パーカッショニスト高田みどりさんのソロ第一作の復刻盤です。1983年といえばサティが再評価されてアンビエントやミニマルが花盛り、その一方でワールド・ミュージック(民族音楽)が一般音楽リスナーに注目されるようになりつつあった時期です(ブルガリアン・ヴォイス等)。そういうわけで本作も外に向けて感情的に自己主張する西洋音楽への懐疑を経て、内面世界を探求するフィジカルな方法論(ミニマリズム、アフリカのパーカッション、ガムラン等)によって制作されています。言い遅れましたが本作は全曲高田さんの多重録音による現代音楽インスト曲集でありまして、わたしなどはジャケ絵やタイトルからなんとなく谷山浩子「夢半球」あたりのニューミュージックを連想してしまったので(あるいは「アンリ・ルソー氏の夢」という曲名から元マグマのローラン・ティボーの「Mais on ne peut pas rêver tout le temps」あたりのジャズロックを連想してしまったので)予想外でした。
そこで本作の内容についてですが、もちろんたいへんすばらしいイマジネイティヴな作品集ではありますが、どうもやはり西欧的です。音響的なのとミニマルパーカッシヴなのと交互に収録されていますが、パーカッションのリズムが次第に速度を増して「カタストロフィ」に到る掉尾の「カタストロフィΣ」などは、発想からして西欧的です。言い換えるとたいへん知的です。

アンリ・ルソーというよりはレオノーラ・カリントンふう(部分的に田中一村ふう)のジャケ絵もたいへんすばらしいです。

高田さんはのちにフリージャズのカン・テファン&佐藤允彦とトリオ「トン・クラミ」を結成しています。


Midori Takada Solo Works - Through the Looking Glass

1. アンリ・ルソー氏の夢
2. CROSSING
3. トロンプ=ルイユ
4. カタストロフィΣ

All works composed and performed by Midori Takada
Produced by Midori Takada

LP: RCA, RCL-8369 (1983)
CD: BRIDGE-INC., EGDS-75 (2017)


Heather Leigh "I Abused Animal" (2015)

Heather Leigh

"I Abused Animal" (2015)




アルバート・アイラーの影響を受け、ペーター・ブレッツマンとも共演しているノイズ/エクスペリメンタル/DIY(本人は自分がやっているのは「ロック」だと言っています)のヘザー・リーさんのペダル・スティール・ギター弾き語りアルバムです。正式なスタジオでエンジニアがついて録音するのは初めてとのことで、歌ものなので曲を用意していったようですが、タイトル曲「I Abused Animal」はその場で即興で出来たそうです。
しかし「歌」というよりは「チャント」という感じです。
ところで、このアルバムをきいて私は「灰野敬二」みたいだなーと思ったのですが、それは要するに、他人がお膳立てしたテクニックや理論に頼らない、自分の音楽は自分で発見し作っていくというスタンスが共通しているからでありましょう。インタビューでヘザーさんはこう語っています。
「The musicians, visual artists and writers I’ve always been the most attracted to are those that are the most idiosyncratic. Those that follow no one’s rules but their own have my heart. Having said that I have nothing against training and in some ways stand in awe of musicians who do understand how to read music, understand theory, can tell you what a chord is even! But I recognize that my approach is mine and an ‘official’ way is not the way my mind works or how I approach my music. I work intuitively and I must emphasize this, I do WORK, in my own way.
(私はつねに最高に独自(idiosyncratic)で自分自身のルールにしか従わない音楽家や芸術家や作家に魅力を感じてきた。音楽的なトレーニングを否定するわけではないけれど、私はオフィシャルなやり方では私の意図する音楽を作ることができない。私は直感的に、なによりも私自身のやり方で作業するのです。)」



Heather Leigh - I Abused Animal
LP: Ideologic Organ, SOMA023 (2015)

1. I Abused Animal
2. Quicksand
3. All That Heaven Allows

4. Passionate Reluctance
5. The Return
6. Fairfield Fantasy

Heather Leigh: pedal steel guitar, vocals
All music composed and performed by Heather Leigh
Recorded and engineered by Joe Gubay, Surrey October 2014



Emtidi "Emtidi" (1970)

Emtidi

"Emtidi" (1970)



ドイツのフォークユニット「エムティディ」は、プログレ寄りのセカンドアルバム「Saat」(1972年)によって評価されていますが、ファーストアルバムである本作は、全編にわたってアコギと歌(男女デュエット)を中心とした、たいへん地味な作品であります。後半になるとインストが中心になるので、さらに地味になります(あやしげなスキャットジェスロ・タルふうのフルートは入りますが)。
わたしはThorofonレーベルの再プレス輸入盤に日本語ライナー(帯兼用)が挿入されたLPで愛聴していましたが、それはどこかにいってしまいました。
Emtidiはギターと歌(およびフルート)のMaik Hirschfeldtと、ギター、ブズーキと歌(およびカズー)のDolly Holmesの二人組で、英語で歌っています。ドリー・ホームズの歌い方はジョーン・バエズとかジュリー・コリンズ、ナナ・ムスクーリのようなコンテンポラリーフォーク路線だとおもいますが、曲の終りに電子音を入れたり(「Space Age」)、エスニックなブズーキにフルートとスキャットが乗っかる延々7分強のインスト「Flutepiece」を入れてしまうあたりはたいへんクラウトです。
再発CDの英文ライナーによると、マイクはバヴァリア出身、親に反抗して学校もやめて世界を旅して回っているうちに(ヒッピーですな)ロンドンでカナダ(ヴァンクーヴァー)出身のドリーと出会い意気投合、Timという人(詳細不祥)も入れて三人でベルリンで音楽活動をはじめました。「Emtidi」というバンド名はMaikとTimとDollyの三人のイニシャル「MTD」を英語読みしたものだそうです。
本作は決して名盤ではありませんが、わたしはインテリはきらいだけどヒッピーは好きなので愛聴しています。
ヘルダーリンの「Hölderlins Traum」(1972年)がすきな人は本作もきいてみるとよいです。そして本作を(というかEmtidiを)すきな人はキャロル・オブ・ハーヴェストの「Carol of Harvest」(1978年)もきくとよいです。


Emtidi "Emtidi"
LP: Thorofon ATH 109 (1970)
CD: Garden of Delights CD 145 (2009)

1. Lookin' For People (Holmes/Hirschfeldt)
2. Shadow On Your Face (Holmes/Hirschfeldt)
3. Long Long Journey (Holmes/Hirschfeldt)
4. No Turn Back (Holmes/Hirschfeldt)
5. Space Age (Holmes/Hirschfeldt)

6. Let The Joint Go 'Round (Hirschfeldt)
7. Yvonne's Dream (Hirschfeldt)
8. Birds On A Graveyard (Hirschfeldt)
9. Flutepiece (Hirschfeldt)


Dolly Holmes: six-string guitar, bouzouki, kazoo, vocals
Maik Hirschfeldt: seven and twelve-string guitar, flute, vocals

Recorded on 8/9 July 1970

YBO2 "Kingdom of Familiydream" (1986)

YBO2

"Kingdom of Familiydream"

(1986)



YBO2のセカンド・アルバムは1986年のクリスマス・イヴにリリースされました。未CD化ですが、「Kingdom of Familydream I & II」および「Deadhuman's Paradise」はグレーテストヒッツCDに収録されています。ジャケット記載のタイトルが「KINGDOM OF FAMILIYDREAM」と「I」が一個多くなっているのは、当時のインタビューによれば誤植ではなく意図的なもので、家庭における「愛(I)の過剰」を表しているそうです。家庭における愛の過剰の結果がどうなるかというと、「Kingdom of Familydream」の歌詞にあるように、「Every good boy must go to hell」(良い子はみんな地獄行き)というわけです。この「Every good boy」云々のフレーズはムーディ・ブルースの名盤「童夢」の原題「Every Good Boy Deserves Favour」(良い子はえこひいきされて当然だ)に由来していますが、その「童夢」のジャケを見ると、育ちの良さそうな少年が老人に宝物を見せてもらっている絵なので、うっかり少年に感情移入してしまいますが、ジャケを引っくり返して裏を見ると、すっかり存在を無視された可哀そうな二人のみすぼらしい身なりの少年が描かれているので、「ああ自分はこっちだった」と、おのれの身の程を思い知らされる仕掛けになっていて、それこそ「地獄へ行きやがれ」と呪いの言葉を吐きたくもなろうというものです。私のように幸福な子ども時代を過ごすことができなかった人間はものごとを素直に見れなくなるので厄介です。
それはそれとして、この「Kingdom of Familydream」というのはディズニーランドのキャッチフレーズだったということですが、それにジャケのラファエロの聖母子が象徴するキリスト教的家族幻想(愛情に満ちた聖母子像は、やがて我が子の死を悼む「ピエタ」像として再現されることになります)そして国家の共同幻想が重ね合わされて、ようするに「家庭の幸福は諸悪の本(もと)」(太宰治)であり、「家庭(国家)のエゴイズム」が新しいエルサレムを目指して「異端者」を火刑に処したり植民地政策したり原爆をおとしたり枯葉剤をまいたりピンポイント爆撃したりする一方、われわれはわれわれで東夷を征討したり旅順を陥落させたり真珠湾を攻撃したり経済成長したりして、「非国民」ではない忠孝心の篤い「良い子」たちは地獄のような戦場に送り出されて「お母さーん」と叫んで自爆したりすることになります。

本作からギターで河本さんが加わっていますが、シングル「空が堕ちる」に引き続きZOAの森川さんがギターで、そしてゲストとしてリビドーのMALさんがサックスで参加しています。

A-1の「Die Verwandlung」はカフカの「変身」の原題ですが、「変身」ではグレーゴル・ザムザが毒虫に変身してしまうことによってファミリードリームに亀裂が生じ、家族の厄介者になったグレーゴルを排除することによって家庭に再び平和が戻ります。虫になるまえのグレーゴルは家族思いで仕事熱心な「良い子」でした。A-2「Kingdom of Familydream I」は、「光の国」導入部や「円」などとも共通する、三拍子の中世舞曲ふう小品。「きよしこの夜」のオルゴールではじまるA-3「Kingdom of Familydream II」は前曲のヘヴィプログレ版。そしてB-1「Deadhuman's Paradise」では地上&天上の楽園を求めて泥沼の戦闘が繰り広げられます。
大蛇のようにヘヴィにうねくる北村昌士のベースはいつきいてもゾクゾクします。これはむしろヘヴィというより「蛇い」ベースというべきでしょう。北村昌士はベースにファズかけてハウリングする自己のスタイルを「ヤクザな」ベーシストと表現していますが、ヤクザでないロックはロックですらないです。芸術行為においてはヤクザ者こそが真人間であるという、文芸評論家吉田健一によって確認された古来よりの事実をここで改めて肝に銘じておきたくおもいます。余談ということでいえば、かつてSSE(北村昌士のレーベル)のサイトのリンク集に「やっぱり蛇が好き」というのがあったのでクリックしてみると緊縛写真が出てきました。緊縛写真というのは非常に興味深いものであって、海蛇に巻かれて悶え死ぬラオコーンがレッシングの美学の重要なテーマとなったことでも了解されるように、人類はおのれの深層心理の蛇によってグルグル巻きにされているといってもよいです。キリスト教グノーシス主義の一派であるオフィテス(Ophites)は神/キリストを蛇と同一視しましたが、「それというのも、蛇が万物に先んじてこの世に生まれたこと、この世界の創造者は蛇の私生の孫にすぎないと、彼らが考えたからである。この蛇は、ライオンの頭をしたアイオンに巻きついているが、ミトラ信者たちは、このアイオンのことを、時間およびその帰結としての破局のシンボルだと考えていた。」(フランシス・ハックスリー『龍とドラゴン』中野美代子訳)。日本人の蛇信仰をモノマニアックに論じた吉野裕子の名著『蛇』は、人間の脳の一番奥には「恐竜の脳」である「R(爬虫類)複合体」が存在するというカール・セーガンの言葉を引用しつつ、蛇は「人類の遠祖であると同時に、もっとも恐ろしい敵でもあったのである」「蛇をはじめとする一群の爬虫類に接するとき、このように畏れとも嫌悪ともつかないある種の反応を人は覚えずにはおられない」と述べています。
B-2は「Living in Labyrinth」「Gravity」「自転車男」系列の、吉田さん主導のルインズ路線の楽曲。B-3は「帝国の逆襲」「System of Making Paranoia」系列のナンセンス言葉遊びソング。B-4「Lovely on the Water」はフランキー・アームストロングなども歌っているトラッド曲で、クレジットには「Based from old British trad song」と妙な英語で書かれていますが、ようするにスティーライ・スパンのアレンジのカバーです。スティーライがアレンジしたトラッド曲のYBO2によるカバーヴァージョンは「Alienation」収録の「Boys of Bedlam」が秀逸ですが、1992年のライヴCD「My Rest Place Live」所収の「When I Was Horseback」も切迫感があってよいです。そこいくとこの「Lovely on the Water」は、メロトロンによるイントロはキュートですが、ただやってみただけという感じで、なんかごちゃごちゃしていていただけません。とはいえこの曲の歌詞、
「For Tower Hill is crowded
With mothers weeping sore,
For their sons are gone to face the foe
Where the blundering cannons roar.」
(タワーヒルは悲しみの涙に暮れる母親たちであふれた、なぜなら息子たちは大砲轟く戦場へ殺し合いに行ってしまったから)
は、本作のテーマとあいまって、たいへん効果的であるといえます。
「「黙示録」のサウンドトラック」(北村昌士)である本作でとりあげられているキリスト教終末思想に関しては、本作とほぼ同時期に執筆/刊行された彌永信美の著作『幻想の東洋』を参照されるとよいです。

そして「Kingdom of Familydream」をきいた人は、ついでにZOAの「Humanical Garden」とオザンナの「人生の風景」もきくとよいです。


YBO2 "Kingdom of Familydream"
Transrecords / TRANS 16 (1986)

A-Side
1. Die Verwandlung (変身)
2. Kingdom of Familydream I
3. Kingdom of Familydream II

B-Side
1. Deadhuman's Paradise
2. Universe
3. Springfield
4. Lovely on the Water

Masashi Kitamura: bass, voice, guitar, mellotron
Tatsuya Yoshida: drums, voice, piano
Seiichiro Morikawa: guitar (A-2, B-1), voice
Hideki Kawamoto: guitar (A-1, A-3, B-2, B-3)
Yukinori Maru: saxophone (A-3, B-2)

Engineer: Hiroshi Matsuo
Assistant engineer: Masaru Nakano
Recording directer: Tadashi Satoh

Released at Holly 24. December 1986
Recorded in November 1986 at M.I.B.

All songs by YBO2 except B-4 (trad.)